HETE-2 衛星

HETE-2 (High Energy Transient Explorer 2) はガンマ線バーストを検出して、その位置を機上のコンピュータでガンマ線バーストの到来方向をバースト発生後、数十秒で地上観測者に速報するという、当時新しいコンセプトの衛星でした。地上の望遠鏡による即時追観測により、ガンマ線バースト発生直後の詳しい観測が初めて可能になりました。この HETE-2 でのコンセプトは、よりスケールアップして後継機の Swift 衛星へと受け継がれました。2000年10月に打ち上げられ、2006年まで運用をした衛星です。

吉田研はガンマ線バーストの位置決めを行なう WXM (衛星の中心に位置する観測装置)の開発、および打ち上がった後の運用に中心的な役割を果たしました。吉田研OBの中川友進さんはHETE衛星のデータで博士論文を書き、2007年に吉田研博士第一号となりました。また、助教の坂本貴紀さんもHETE衛星のデータ解析で 2004年に博士号を取得しています。
HETE-2衛星の歴史

多派長でのガンマ線バースト観測衛星というコンセプトは 1981年に開かれたサンタクルズ会議で議論されました。1986年には、マサチューセッツ工科大学が主導する HETE 計画のために国際チームが提案されました。この計画はガンマ線バーストの謎を解明すべく、ガンマ線バーストの正確な位置決定と広い波長帯での観測という科学的な目的を絞ったものでした。1989年に NASA がガンマ線バーストを探査する低予算の衛星計画を認め、1991年に HETE-1 計画へ予算がつき、HETE-1 衛星の設計および製作が始まりました。

HETE-1 衛星はバージニア州 Wallops 島からペガサスロケットで、アルゼンチンの SAC-B 衛星とともに、1996年11月に打ち上げられました。ロケットは予定通りの高度まで上がりましたが、第3ステージでの衛星とロケットとの切り離しに失敗し、HETE-1、SAC-B 両衛星とも打ち上げ後、1日以内での太陽電池からの電力供給ができず、衛星として機能する事はありませんでした。

しかし、その後 HETE チームの懸命な努力で、HETE が目指していたガンマ線バースト観測の意義が認められ、NASA は HETE-1 でのフライトスペアー品を用いた HETE の再挑戦を認めました。そして、1997年7月に HETE-2 衛星の予算がつきました。

サンタクルズ会議から約20年後の2000年10月に、HETE-2 衛星はペガサスロケットで無事、予定の軌道に投入されました。

ガンマ線バースト発生位置を数十秒で速報

HETE の一番の特徴は、ガンマ線バーストの発生位置の速報です。HETE はガンマ線バーストを検出すると、そのバーストに関する観測結果を赤道上に配置された受信専用の局に向けて送信します。その情報はマサチューセッツ工科大学で集約されてから、ガンマ線バースト観測網 (GCN: GRB Coordinates Network) によって世界中に配信されます。GCN加入者は HETE のバースト座標をバースト発生から数十秒で受け取る事が可能です。

この速報体制を可能にしているのは、HETE の軌道上に置かれている地上局です。HETE は 137.96 MHz という周波数帯を用いて 300 bps のパケット化されたデータを常に放送しています。普段は衛星や検出器のステータス情報を流していますが、ガンマ線バーストを検出すると、バーストが起こった時刻、軌道上のどこで起こったか、トリガーが起こったタイムスケール、エネルギーバンド、機上での位置決め解析の結果などが放送されます。

HETE-2 からの放送を受信する地上局は、非常に安価なシステムです。必要なものを VHF のレシーバー、アンテナ、そして、コンピュータだけです。

下に示す図が HETE-2 の赤道軌道上にくまなく配置されている地上局 (赤点) です。赤丸の範囲が各地上局の受信可能範囲を示しています。これならば、HETE-2 が軌道上のどこにいても HETE-2 からの放送を受信する事ができます。

広帯域でのバースト本体の分光観測

HETE-2 には 3つの観測機器が搭載されています。特にガンマ線バースト本体の放射スペクトルの研究で重要な役割を持っているのが、X線の検出器 (WXM) とガンマ線検出器 (FREGATE) です。その 2つの検出器のデータを用いる事で、2-400 keV という 2桁以上にもわたる放射スペクトルの様子を研究する事ができます。

HETE-2 のデータはまだまだ、宝の山です。吉田研究室には、HETE-2 のデータ解析環境が整っています。

HETE についてもっとくわしく知りたい方はこちらをどうぞ。